Picasso vs. Pollock
しばらく音楽ネタばかりだったので、別のトピックを書いてみよう。
もう先月のことだが、CATVで"Surviving Picasso"という映画を見た。ピカソ役はAnthony Hopkins、相手役のフランソワはNatascha Mcelhone、しかしピカソの映画というよりはピカソをめぐる女性をフランソワを中心に描いているというべきで主役はフランソワだろう。ピカソに振り回される女性たちの中でフランソワは自立していく、ということなんだがどうもHopkinsが中途半端かなぁ。
ピカソといってもその作品は色々と見たものの本人は写真で見た程度しか知らないが、Hopkinsって人はなんかアクが強くて結局Hopkinsにしか見えないし、彼のピカソはどうも画家っぽくない。絵を描くシーンはほとんどないし、創作とか制作をする画家という雰囲気が希薄だ。
結局はこの映画はフランソワを中心にピカソに群がる女性を描いた、という程度の中途半端な恋愛映画の域を出ていないと思う。他の女性たちも類型的(ステレオタイプ)で魅力に欠ける。肝心のHopkins扮するピカソなんか単なる狂言まわしにすぎないなぁ。
それに比べると、Ed Harrisが主演の"Pollock(邦題「ポロック 2人だけのアトリエ」)"はかなり味が違う。この映画は勤め先の取引先(前回の記事の米国人はその会社の方)が少々関係しており、昨年そのビデオをいただいたものだ。だから、字幕も吹き替えもないから結構分からないところもあったが大体の筋は理解できたと思う。
ここでも女性が重要な役割を担っていて、Pollockを支えるLee Krasner役のMarcia Gay Hardenが相当によい。二人の出会いから彼女に支えられてPollockは独自のスタイルを確立するが、やがて破滅にいたる、と、こう書いてしまうとすごく類型的なストーリーなのだが、これをしっかりしたものにしているのはやはりEd Harrisが徹底してPollockを研究しているからだろう。
彼はこの映画の構想を10年くらい温め、その間にPollockもどきに絵を描くという練習を相当にしたらしい。だから彼が絵を実際に描くシーンが多く出てくるし、その描き方も素人目に見ると相当なものだと思える。ただ映画のシーンにもあるが、Pollock本人が制作過程を画像に記録しているので、本物を見たその道の人に言わせると、まだまだ甘いらしい。
さて、Surviving PiccasoとPollockの大きな違いはやはり何が主題なのかという辺りではないかと思う。Ed HarrisはあくまでPollockの芸術=生き様を描こうとし、それを中心に人間模様が展開するのだが、Hopkins-Picassoは恋愛映画、よく言っても自立する女の映画の題材にPicassoを選んだだけになってしまっているというところだろう。
Harris-Pollockは、Harris自身が芸術を創作する人間になりきろうとしてPollockと一体化し成功しているが、Hopkins-Picassoは狂言まわしのHopkinsを無理にPicassoに似せようとして部分的にはそのようにも見えてもほとんどは失敗している(・・・と思う)。
さて、Pollockは主演のHarrisが監督だが、Surviving Picassoの製作に参加したDavid L.Wolperという人は"Imagine/John Lennon"というドキュメンタリーの製作にも参加しているそうだ。
ImagineはLennon本人を取材した完全な伝記的ドキュメンタリーだが、それ風映画として比較してみたいのが、Angelina Jolie扮する"Gia"とWoody Allenの”Sweet and Lowdown(ギター弾きの恋)"、だけどこれはまたの機会にしよう。
POLLOCK 米国版ビデオ
Lee KrasnerはPollockの死後、若手芸術家育成のためにPollock-Krasner Foundationという基金を創設したが、数年前に取引先の方と一緒に来日し僕が同行させていただいたJackie Battenfieldさんは、この基金のPollock-Krasner Foundation Grant in Paintingを受けられた。来日した際にいただいた彼女の小品を僕のサイトに掲載している。
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