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2005/10/10

Musikalishes Opfer

高校生のころ、バッハやバロック音楽をよく聴いていたことがある。当時、日曜の朝にはNHK-FMで「バッハ連続演奏」という番組があって4トラオープンリールのテレコで毎週録音していたものだ。そのテープはその後、ジャズやら何やらで上書き(とは言わないだろうが)されて今はない(再生機は壊れテープのみ残っている)が、その連なりでスィングルシンガーズのLPも買ったりしたのが大学へ入ってからのジャズにつながったのかもしれない。

当時はカールリヒターとミュンヘン・バッハ管弦楽団、合唱団が斬新なバッハ解釈で注目を集め、来日公演もNHKで放映されたりした。当時購入した彼らのアルバム「マタイ受難曲」や「音楽の捧げもの(下のイメージ/アマゾンから)」などはよく聴いたものだ。music

さて、話題は変わってキースジャレットの本というのが時々利用する隣町の稲美町立図書館にある。蔵書もさして多いとは思えない図書館に何故この本があるのか不思議なところだが、今までに3回は借りたものの未だに読破できずにいる。

その中にキースの言葉として「ポリフォニーにおいて人間の耳に認識できるのは4声までということが科学的に証明されているのだが、実際に即興で弾いているときには4声を超えることがある」というような内容の記述がある。僕もギターでクラシックのポリフォニーを弾くことはあるが、区別できるのは2声がせいぜいかな、という話はさておき、この話を読んだ時に思い浮かんだのがバッハの「6声のリチェルカーレ」だ。

これは前述の「音楽の捧げもの」に入っている曲だが、もとはフリードリヒ大王がバッハにテーマを与え、それに基づいて6声のフーガを書けるか、といわれたものに対しチェンバロでその場で即興で弾いたものの、満足できるものではなかったために後日、課題であった6声のリチェルカーレ(フーガ)にさらに様々な変奏を加えて大王に捧げた、という逸話がある。

つまりバッハも4声どころか6声のポリフォニーを即興で演奏したわけだ。僕が持っているアルバムではカールリヒターが弾いているがきちんと聴き分けて演奏しているのだろうし、大体が指揮者や作曲家がオーケストラ用の曲を演奏したり作曲したりする場合は、あれだけの膨大な楽器の音を全て頭の中で鳴らして曲想をつかむらしいから、6声どころではないはずだ。

はてさて、キースのいう「4声が限界と科学的に証明された」という話は一体何なのだろうか。

vendome
ところでこの6声のリチェルカーレはジョン・ルイスが作編曲しスィングルシンガーズとMJQが競演した「ヴァンドーム広場」というアルバムに入っているのだが、この競演は本当に素晴らしい。右の黄ばんだイメージは僕の持っているLPの今はなつかしい見開きジャケットをデジカメで写したものだ(ポップアップして見てください)。

さらにMJQは、この「音楽の捧げもの」の中からフリードリヒ大王のテーマにヴァイオリンで2声のカノンを乗せた4曲目をスタンダードの「朝日のようにさわやかに」のイントロにも使ったりしていて、ジャズには結構、縁の深い曲でもあるね。

前述のようにバッハの時代には即興演奏というのはごく当たり前に行われていたのは有名だ。例えばAABBなどと繰り返しのある場合は、2度目の繰り返しは楽譜のままではなく即興で演奏する、といのは今でも行われる場合があるのはTVでの演奏で聴いたことがある。また楽器の指定がない曲(音楽の捧げものの半分くらいはそうだ)は楽器も演奏者の解釈に委ねられたりしてかなり自由度が高いのだな。

それとバロックのころの曲は意外とジャズのコード進行と似ているものが多いように思う。僕の世代では4度進行などといっていた(最近はそうは言わないらしいが)ものがバッハの曲などにも多くて、そんなことや即興性という面でジャズとバロックは相性がいいのだろうと、一人で納得している・・・と、今回は珍しく音楽の話になったね。

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2005/10/08

LOST & FOUND

二日ほど、久しぶりに東京方面での仕事があったのだが、ちょっとした事件があったので書いておこう。

僕の仕事は色々あるものの、いつもはショボい系ばかりなんだけど今回はかなりなBig Oneだ・・・といっても権利関係がうるさいお客様なので細かいことはいえないが・・・。

初日は「アメリカ人相手に技術的な説明を」という担当の営業さんからの依頼もあり僕が狩り出されたということなのだが、きちんとした通訳の方がついていたので(さすがに大手だ)、特に英語を使うこともなく何とかこなすことができた。でもミーティング後に個人的にもう一度説明を求められた時には、思わず英語が出てしまったので、通訳の方はちょっと不愉快だったかもしれないな。。harlie

さて仕事が予想外に早く終わってしまったのだが、営業さんが駅前に映画館があるからそこで時間をつぶそうか、といいだした。ということで、僕は娘が面白いといっていた「チャーリーとチョコレート工場」を見ることにした。映画はよく出来たお伽噺という感じだな、今回の仕事には相応しいかもね。

宿泊先は駅からは不便なので、タクシーでいくことにしたのだが降りる際にお金を出そうとすると・・・・ない!、ないない、サイフがないぃぃ!!、 どっかで・・・というより映画館でチケットを買うまではあったのだから、あの辺り以外には考えられない。

とりあえず同僚にタクシー代も前払いのホテル代も払ってもらった上に1万円だけ借りて、再度駅前の映画館に戻ることにした。いつも来ている同僚がいうには、あの辺りには人様のものを取るような人間はほとんど来ないはず、だから映画館に届けられているんじゃないか、というのだ。

しかしこういうときに限って中々タクシーが来ない。

しばらくしてやっと来たタクシーに乗り、一路駅前まで引き返す。運転手さんが何か話しかけてくるけど頭の中はそれどころではないので、ろくに返事もしないからその内に黙ってしまった。でも料金が気になるのでメーターを見ていると来る時より安そうだ、どうしてかな?

 駅前に到着、1万円札を差し出す
 「あらぁ、私も細かいのをオツリに出してしまってないんですよ、ありませんか?」
 サイフを落としたので映画館に捜しに来た事情を話す
 「ならばここで待ってますから、用事を済ませてきてください」
 「その時にお金を崩してきてくださいよ」
 その言葉に甘えることにし、急いで映画館まで走る

 「いえ、届いてませんねぇ、どの映画をご覧になったのですか?」
 「どの辺りのお席でしょうか、8時過ぎに今の上演が終わりますので見ていただけますが」
 いや、タクシーが待っているので・・・
 「お名前とお電話番号を・・・」
 ついでに同僚の携帯番号を書いておこう(僕は持ってない)
 急いで駅に戻る・・・お金を崩さなきゃ・・・喉が渇いたな・・・

 「アップルジュースですね、サイズはどれになさいますか?」
 Sで・・・お金がないもんね~

しかしこのまま客が遁ズラしてタクシー代を払わないってこともあり得るのに、人のいい運転手だな

 「サイフは? あらぁ、災難ですねぇ」
 「お金は崩せました?」
 「料金はKeepにしておきましたから、ここに着いた時の金額のままになってますからね」
 「タクシーにはそういう裏技があるんですよ」
 「え、ホテルへ戻るんですか、じゃ継続で帰るほうがお安いですからそうさせていただきますね」

 「このタクシーは普通より料金が安いので近場でもよく利用していただくんです」
 「だからつり銭がどうしてもすぐなくなるんですよ」

そうか、だから最初のタクシーより安かったんだ。しかし、わざわざ自分が損するような裏技をしてくれるとは・・・

 帰路は何だか打ち解けて色々話をする(サイフの件ですごく同情してくれた)

 「\3220ですが\3000でいいですよ、自分に対するペナルティーです」
 「いえ、私がオツリを用意していなかったのが悪いですから」
 「レシートは\3220で出しますから経費で請求しちゃってください」
 いや、そういうわけにはいかないけど・・・

 ペコペコと頭を何回もさげお礼をいいながらタクシーを離れる
 ホテルに戻り、同僚のお金をあてに食事に出る

 酒好きな彼は結構飲んでいる
 ・・・僕は飲めないからな
 「・・・? 誰やろ、こんな時間に」
 「はい、**です」
 「え、どなた? は?何ですか?」
 「え? あった? ほんまに? え~。よかったぁ!ありがとう」
 「おい、映画館からや、サイフがあったって、よかったなぁ」
 ・・・ううう(うれし涙)
 「俺の携帯、教えといたんか、そうか」

これで今夜は安心して寝られる・・・あぁ、よかったぁ。

 翌朝、早速映画館に行き落し物のサイフを受け取る
 またペコペコと頭を下げながら映画館を離れる
 意気揚々と、でもないけど清清しい気分で再度客先を訪問

 「じゃ、ちょっと現場を・・・」

 エレベーターで途中まで昇るものの、そこからは外壁に沿った足場を上がっていく。
 お客様は慣れたものだが・・・
 最上階、地上60mだそうだ・・・足場に覆いのネットしかない
 怖いなぁ、でも何だか爽快な眺めだな
 片側は海だけど、反対側は色々あるなぁ・・・

 来年の今頃はこの高さから落ちる人が何人も出るらしい・・・

  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

世の中、まだまだいい人がいるって本当に実感した二日間でした。映画館の中を捜して電話してくれたチケット売り場の方、そして親切な運転手さん、本当にありがとうございました。

初日に見た映画もそうだけど、今回の仕事では楽屋裏ばかり見てきたあの世界にひょっとすると僕も引き込まれていたのかもしれないね、そう思えばまた楽しからずや。

しかし「チョコレート工場」にモノリスが出てくるとはねぇ・・・あれは子供には分からないだろうけど、ククク・・・、映画については、ゆうけいさんのblogこちらなんかをどうぞ。

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2005/10/02

きまぐれオレンジロード

きまぐれ・・・が続くとやっぱりこれを僕としては出したいところ。

80年代コミックだからもう15年以上経ってしまってるが未だに人気はあるようだ。ジャンプでの連載は知らないのだが、TVアニメではまってしまい、その後単行本を全巻買い揃えたりした。全くいい歳のおっさんが・・・、とはいえ当時はまだ30代だったけどね。

アニメでのフラッシュバックのように次々と変わるタイトル画面の当時としてはかなりな斬新さにまず惹きつけられたのが始まりだったような気がするが、音楽がよかったと思う。和田加奈子を知ったのはこのアニメのエンディングテーマ「夏のミラージュ」からだった。メロディーもよかったけど作詞が湯川れい子というのがちょっとすごいな。やはりそこらのアニメソングとは一線を画した素晴らしい詞だと思う。3枚出ていたアニメのCDも買ってしまったし。中原めいこを知ったのも同じくだった。二人とも最近はどうしてるのだろう?orange_road
  瞳の中の ペルシャ・ブルー
  ミステリアスな未来 見せてほしいの
  (夏のミラージュ/湯川れい子 ブリッジの詞) 

詞はこちらに、何と英訳つき出ている。でもペルシャブルーはpersian blueなんだけどな。ペルシャブルーはもちろん、古代ペルシャの陶器や建造物のタイルなどに見られる青でコバルト系の化合物らしい(自信なし)のだが、一方、prussian blueは紺青ともいいプロシア(プロセイン)つまり昔のドイツで18世紀に発明されたフェロシアン化鉄錯体だ、ってそんなことはどうでもいいか。

イメージは2枚目のCD、ポップアップしてもらうと右がまどかさん、左がひかるちゃん。今はこのジャケットで出てないのかな、アマゾンではみつけられなかった。

漫画の方は作者のまつもと泉のデビュー作だったのかな、初めの頃のやや未熟な画風からどんどんと成長するにつれてキャラクターもかなり変化して、終わるころには初期とは比べ物にならないくらいしっかりした絵になっていた。といっても初期の絵も結構好きだけどね。アニメの方は違う人が描いていて(キャラクターデザイン:高田明美)、多少雰囲気が違うのと、ストーリーもかなり違っている。話の結末なんかはまるっきり違うのだが、まつもと氏はアニメは自分の作品とは別物だからと、全く口をはさまなかったのだそうだ。上のCDジャケットも高田さんが描いたもの。

登場人物の魅力もあるけど、中途半端な超能力とか3角関係などユニークなラブコメだった。ストーリーは結構いい加減なところもあったけど一つのスタイルを作り上げたと思う。最近ジャンプで連載が終了した「いちご100%」なんて明らかにこの影響がモロだと思う、特に最後のシーンなんかはそのまんまだ。

続編は小説形式で出ていて2冊は読んだが、その後も出ているらしい、でもそれは別のストーリーなのでもう読もうとはあまり思わないな。

ということで、「きまぐれ」に画面の色調も変えてみました。モノクロでしっとりとした感じで見やすくなったかな。

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2005/10/01

きまぐれ・・・ロボット

星新一の「きまぐれロボット」を読んでみることにした。前回の記事でアップしていたアニメの博士の容姿は「スチームボーイ」のエディのそれとどういう関係なのか確かめる意味もあったし、このところこういった小説を読んでいなかったから、久しぶりに読んで見ようということもある。

アマゾンで見るとユーズド文庫本ならなんと¥1などというとんでもない価格がついているが、しかし送料がかかれば新品と大差なくなってしまう。以前から欲しかったDVD(Manhattan/Woody Allen)や娘の誕生日プレゼントのDVDも一緒に買えば送料は無料になるので新品を買うことにし、数日前に到着した。

170ページあまりの文庫本だから、計算上は1.5時間もあれば読み終えるはずなのだがショートショートというのは数編読むと気が移ってしまって中々読み進めず、やっと半分ほど読んだところだ。全く根気が続かない。

さて今まで読んだ範囲でいうと、アニメの博士にあたるエヌ博士やエス博士などが登場するのだが、その容姿についての記述は全くないのだな。ということは:kimagure

 ●アニメの博士の容姿は小説によるものではない
 ●公開はスチームボーイの方が早い
 ●スチームボーイは9年の歳月をかけたとか
 ●きまぐれロボットは比較的最近の制作らしい

以上から考えると、きまぐれロボットがエディの容姿をパロったと考えるのが順当ということで、一件落着だ。ということで、僕の早とちりということだね。

右の表紙は単行本のもの(アマゾンから)

内容はというと、アニメのやや品のない博士とは違って星新一らしい笑いの中にも品格のあるショートショートというべきだな。それにアニメに登場したグラマラスな助手も出てこない(アニメはストーリーにもかなりな脚色というか創作が入っているようだ)。よくは知らないがいわゆる江戸落語のエスプリとか都会的なエッセンスとかがあるのではなかろうか。

その点で昔からなのだが、上方のどぎついお笑いに慣れた身にはやや物足りなさを感じてしまい、実は星新一の小説はあまり読んでいない。だからか、筒井康隆などはよく読んでいたのだが、それも20代中ごろに食傷気味になってしまい、以来ご無沙汰だ。そういえば高校から大学にかけては内外のSFを随分と読んだが、今も心に残っているのはレイ・ブラッドベリやエドガー・ライス・バローズ、スタニスワフ・レム、そしてH.G.ウェルズなどかな。

きまぐれロボットの挿絵は和田誠なのだが、星新一というとどうも真鍋博の絵を連想してしまう。あの無機的でグラフィックデザインのような画風が星新一の都会的でちょっとスノブな文体と相性がいいし、その組み合わせの本も多かったはずだ。お二方とも既に鬼籍に入られているが、自分が若いころに親しんだ方々がいなくなるのは何ともさびしいものだ。とはいうものの僕も既にいい歳だからなぁ。

そうそう、「砂の惑星」は途中まで邦訳を読んでいたがしばらく離れているうちに絶版になってしまい、原書で読む羽目になったのだ。最終巻に至っては紀伊国屋などでも見当たらず、当時通っていた英会話学校のアメリカ人インストラクターが一時帰国する際に買ってきたもらったのだが、途中で挫折してそのままだな。何とかせねば。

あ、リングワールドの続編も買ったままほったらかしだ・・・、あれは原書では苦しいなぁ。

ところで、「鬼籍に入る」を辞書で見ると英語では"join the majority"とか"leave the minority"というようだ。"more dead people than living people"ということだね。

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