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2006/05/21

江戸の誘惑

最近はちょっと芸術づいていて、先々週の平島先生のギターコンサートアメリカンアート展、そして仕事だけど二条城障壁画模写見学と続いて、今日は神戸市立博物館で開催中の「ボストン美術館所蔵-肉筆浮世絵展」を見に行ってきた。

浮世絵というとやはり人気が高いのか、入場制限をするほどに人が多く、またヘッドホンで解説を聞きながら絵の前から動かない人も多くて見るのが大変で疲れてしまった。やはり先週のアメリカンアートくらいにゆったりしているのが理想的だな。それに県立美術館以上に照明が暗いのも難点だ。

少し前にNHK教育の新日曜美術館でこの展覧会の特集を放送していたし、コレクターであるウィリアム・ビゲロについては昨年だったかに世界美術館紀行で取り上げられていた。ビゲロは結構変わった人で、日本にすっかり魅了されて作品を収集しただけでなく、仏教徒にまでなったそうだし、着物を好んで着ていたらしい。

さて、浮世絵というからには日本独自の芸術のはずなのだが、西洋絵画に慣れきった目には、残念なことにTVで予め見たりして期待していた割には、実物にそれほど感動できなかったのが少々ショックだった。全体に人の表情が単調で動きも躍動的とは言いがたい・・・などと思うのもやはり西洋的な感覚なのかもしれない。能などに通じる抽象的で象徴的な世界なのだろうと思う。まぁ、人が多すぎてゆっくり鑑賞できるような環境とは程遠かったせいもあると思うけど。

0102_1 とはいうものの、むしろ見てから数時間以上たった今、色々と絵を思い返しながらこの記事を書いていると徐々にそれぞれの絵のよさが感じられてくるような気がするのがちょっと悔しいし残念。しかしあの人ごみではもう一度見に行く気はしないなぁ。

さて、やはり異彩を放っていたのは葛飾北斎だった(左イメージ)。TVでもほとんど北斎ばかり取り上げていた。他の作品と明らかに違って見えるのは、西洋的な技法を取り入れていたこともあるのかもしれないが、大胆な構図や存在感のある彩色が素晴らしい。また今回、初めて知ったのが、北斎の娘が、弟子でもあり浮世絵を残しているということだ。それが右のイメージだが、明らかに北斎の流れを汲む大胆な構図と着彩が見て取れる・・・といっても博物館のサイトからいただいたイメージでは全くそれが再現できていないので残念だが。0105_2

また同じ北斎の鳳凰の絵の尾の描き方を見ると、やはり不透明でつや消しの絵具をベタに塗っていくのが日本の伝統的な着彩だと再認識できた。現在のアニメやコミックは明らかにこの流れを汲んでいると僕は確信しているのだが。0104_1 残念ながら左のイメージではその尾の部分はカットされてしまっている。

アニメといえば懐月堂安知の絵は、まさにアニメの元祖とも思えるような筆致だ。強弱のついた太く黒い線で縁取りした美人絵は他の美人画とは違った躍動感がある。また人の立ち姿や歩く姿が奇妙に流れるようにくねっているのは当時の書き方の流行なのかと思うが、こうしたデフォルメも今のコミック文化に受け継がれているものではないかと思う。

会社の同僚とも話していたのだが、浮世絵のように単色でベタに塗るという発想は西洋絵画にはないようだ。だからゴッホの浮世絵模写もなんだかゴテゴテしておかしい。だからそうした描画法が、大胆な構図やデフォルメと相まって当時の印象派の画家たちにはとても新鮮だったのだろう。ベタ塗りは版画という制約のせいもあるからかと思っていたが、今回の肉筆画でもベタで塗られていることから、やはりこれが浮世絵の基本なのだと思う。

しかし、最初からずっとみていると美人画、それも遊女ばかりで風景も吉原だったり遊びの場だったりという題材を考えると、やはり浮世絵は芸術作品というよりも商業的な世界だったのだろう思う。いわゆる芸術としてのファインアートではなく、商業目的であるコマーシャルアートだ。先日、二条城で見た狩野派の絵などとは明らかに区別されていたのだろう。

ついでながら、遊女は英語ではcourtesanとされていた。ちょっと高級な方を指すらしい。花魁というところかな。古語ではlift-skirtsという言葉があるらしいが、これは夜鷹というところのようだ。prostituteというのは一般的な表現なのかな。

今回の展示では版画ではない、肉筆画の浮世絵というあまり馴染みのない作品を堪能できるだけでなく、節句の幟や提灯、歌舞伎の看板など珍しい作品もあるのが見所だ。また北斎の最晩年、つまり数え年90歳に描いたという「李白観瀑図」が素晴らしい。90歳とは思えない力強さと共にその年齢でなければ描けないであろう説得力がある。北斎は百歳まで生きれば自分の絵も何とかなるだろうというようなことを言っていたらしい。会期は5月28日、今度の日曜日までです。

Carpenter ところでアメリカの三大美術館というと、ニューヨークメトロポリタン、シカゴ美術館、そしてボストン美術館だ。僕はどの都市にも仕事で訪れ一週間程度の滞在をしたので、メトロポリタンとシカゴは行ったのだが、不覚にもボストン美術館には行っていないのが、全くの心残り(その代わりではないが、ハーバード大にあるフォッグ美術館を見てきた)。左イメージは91年に訪問したハーバード大のカーペンター・ビジュアルアートセンターを学生が作品として照明したもの。右は日本人留学生の作品。当時のカーペンターセンターのマネージャーだった現代美術作家の片山利弘氏が仕事で少し関係があったので表敬訪問した際の写真。ちなみにカーペンターセンターはル・コルビジェの設計。Carpenter2

最後のイメージは今回の記事とは関係ないけど、ボストンにある、かのバークリー音楽院の入り口。びっくりするくらいに目立たない。B


この記事は21日にTaki blog cocoにアップしたものを加筆修正したものです。そのため文章のつながりがおかしいところが多い点はご容赦願います。

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