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2006/08/26

A Girl With A Pearl Earring/Indian Yellow

今月はMovie Plusで、ずっと以前にゆうけいさんが紹介されていた「真珠の耳飾りの少女」が放映されている。あの有名なフェルメールの絵を題材にした小説に基づく映画だが、今回も英語、ただし映画の中で出てくる絵画用語などにウンチクを傾けてみたいと思う。

映画の中では、絵画、特に画材の好きな人ならば喜びそうな画材や技法のシーンが何度か現れるが、それが目的の映画ではないからサラリと流す程度なのはいたしかたない。とはいうものの、その辺りをピックアップしてみよう。

Vermeerwomanpearlnecklace 最初に画材についての言及があるのは、パトロンのvan Ruijven(ファン・ライフェン)に新しい作品(真珠の首飾り:左イメージ)を見せる場面。台詞についてはDialogue Transcriptのサイトを見つけたのだが、まずは自分で聞き取り、間違っていたところは( )に入れて訂正をその後に書くことにした。

TranscriptサイトURLは下記ですが、ウイルスソフトのCM画面が自動的に出てくるので興味のない人やCMを出したくない方はクリックしないでください。
http://www.script-o-rama.com/movie_scripts/g/girl-with-a-pearl-earring-script.html

van Ruijven(VR): Is this Indian Yellow?
Vermeer: (うなづく)
VR: Distilled from urine of sacred cows fed only on Mango leaves. You glazed my wife in dried piss!
Vermeer: (It's a right colour.) -> It was the right colour.
VR: (? stinting, yet.) -> No stinting, eh?

女性の上着の黄色に使った色を「Indian Yellowだな」と言っている。Indian Yellowはvan Ruijvenが言う通り、マンゴーの葉だけを食べさせた牛の尿から作らjれる。もともとインドで古くから使われていた色素のようで、イギリスがインド統治時代に輸入しヨーロッパ絵画で使われていた。栄養価の低いマンゴーの葉しか食べさせていない牛は極度の栄養失調状態のため、非常に短命だったが、約80年にわたりイギリスは製法を秘密にしていたそうだ。しかし製法が非人道的(秘密が暴露されたらしい)ということで1908年以来製造禁止となっている(1899年という記述もある)。

もう少し調べてみると、Indian Yellowはmagnesium euxanthate、オイキサントゲン酸マグネシウムだ。広辞苑にも「インド黄」として載っている。xanthicとかeuxanthicという語は「黄色みの」という意味を持つ語のようだから、化合物名の語源がその辺りにあるのだろう。実際にはカルシウム塩も混ざっているらしい。

天然の有機色素化合物は大体が耐久性がないために、古い絵画などでは退色してしまうことが多いのだが、Indian Yellowは珍しく耐久性があるらしい(耐久性がないという記述もあり、詳しくは不明)。現在は合成されている、というネット情報もあるが、絵具として実際に使われているのは僕は見たことがない。現在はいずれのメーカーのIndian Yellowも真性の化合物ではなく、もっと近代の新しい合成化学顔料で調色されているようだ。

You glazed my wife in dried piss!

glazeという語は辞書では「ツヤをつける、ツヤを出す」などという意味ばかりだが、ここではIndian Yellowの透明な絵具を塗っていることを指す。絵画でグレーズといえば、透明な絵具を薄く重ねて深みや奥行きをだす技法のことだ。あえてそのまま訳せば「私の妻を乾かした小便に塗りこめてしまったな」とでもいおうか。字幕は「私の家内は尿まみれか。」・・・さすがにうまいね。

映画ではvan Ruijvenの妻の肖像を描いていることになっているが、もちろんそれはフィクションである。この黄色い上着はVermeerの数少ない作品で何度も出てくるので、よほどお気に入りなのだろう。Glaze技法については映画の中でも出てくるので、その時にまた書いてみたい。

It was the right colour.

ボソっと言う台詞なので、"right colour"以外はよく分からないが、僕が聞き取った"It's a right colour."のように不定冠詞だと、「数ある適切な色の中の、これはその一つだ」という意味になるからこの場面ではやや弱いかもしれない。"the right colour"ならば、「これ以外にはない、まさにぴったりの色だ」ということになる。現在形か過去形か・・・僕は現在形の方が普遍的な事実としてよいように思う。

No stinting, eh?

字幕は「贅沢だな」。Vermmerは非常に高価だったラピスラズリをふんだんに使ったことで有名だが、Indian Yellowも惜しみなく使ったということだろう。前述の説明から Indian Yellowもかなり高価だったろうと推察できる。ただ実際にこの絵(真珠の首飾り)に Indian Yellowが使われていたのかどうかは僕は確認していないが、1800年から使われだしたという情報もあり、そうするとVermeerとは時代が合わないことになる。

さて、今日はこのくらいで・・・。イメージはオフィシャルサイトからのリンクから。

参考資料
http://www.realcolorwheel.com/1color.htm
http://www.realcolorwheel.com/1artists.htm
http://www.goldenpaints.com/products/color/heavybody/histpighist.php
http://serendip.brynmawr.edu/forum/viewforum.php?forum_id=246
http://www.thefreedictionary.com/Euxanthic
http://www.thefreedictionary.com/euxanthin
http://en.wikipedia.org/wiki/Indian_Yellow
http://webexhibits.org/pigments/indiv/history/indianyellow.html

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コメント

なるほど、勉強になります。確かにフェルメールがボソボソッ、としゃべるところは聞き取れなかったです。

この映画でスカーレット・ヨハンソンを知ったのですが、あっという間にトップスターになってしまいましたね。
August 29, 2006 at 07:52 AM

投稿: ゆうけい | 2008/12/17 23:13

ゆうけいさん、コメントをありがとうございます。
最初にネットで(静止)画像を見たときは、ヨハンソンの半開きの口がちょっと違和感があってそれほど美しいとは思わなかったんですが、映画を見ると全然違いました。でも微笑むシーンが少ないのが残念です。

投稿: taki | 2008/12/17 23:14

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