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2006/08/05

Finding Forrester III

映画"Finding Forrester" 聞き取りの最後。

Forrester12 Jamal(J)の才能に対し疑念、あるいは嫉妬かもしれないが、そんな感情を持つ教授 Prof. Crawford(P)の授業風景。詩を教材として取り合げ、たまたまその作者と同じ苗字だった生徒に誰の作かと問う。生徒は答えられず困惑するが、教授は慇懃ながら陰険にしつこく詰問する。たまりかねて、Jamalが後ろから小声で助けようとする。中ほどの"Don't"はJamalのガールフレンド Claire(C)が「止めて」と小声で言うところ。Mr. WallaceはJamalのこと。

(J) Just say your name, man.
(P) Excuse me, did you have something to contribute, Mr. Wallace?
(J) I said that he should say his name.
(P) And why would it be helpful for Mr. Coleridge here to say his name?
(J) Because that’s who wrote it.
(P) Very good, Mr. Wallace. Perhaps your skills to extend a bit farther than basketball.

ここで注目したいのは、教授の丁寧な英語表現だ。英語には丁寧表現や敬語がないと誤解している人がいるが、そんなことは全くない。表現にかなり選ばれた言葉を使っていることが分かる。どのような単語を選択すべきか僕には分からないが、かなりの英語力が必要だろう。

詩の作者はColeridge、生徒の苗字もColeridgeだから、Jamalは「自分の名を言えよ」と小声で教える。文末は多分、manといっていると思う。この映画を見る限りでは、黒人同士の会話では何かいうたびに文尾にmanをつけるのが習慣化しているようだ。発音はほとんどメーンと聞こえる。

Excuse me, did you have something to contribute, Mr. Wallace?
さて、Jamalの言葉を聞きつけた教授が聞き返す表現が、いかにも丁寧だ。直訳すれば、「失礼、何か貢献できるものがおありだったのかね、ウォレス君」というところだが、日本語でも英語でも、丁寧になると長く回りくどい言い方になるのは同じということだ。
また普通なら現在形で"do you have..."と聞くところを過去形にしているのも、婉曲のニュアンスがあるのではないかと思う。

Perhaps, your skills to extend a bit farther than basketball.
作者を言い当てたJamalに対し、日頃から彼を疎ましく思っている教授の台詞がいかにも嫌味ったらしい。「どうやら、君の才能はバスケット以外にも少しは拡がるもの(らしい)」(Jamalはバスケット部でもトップの選手になっている)。
Perhapsを使ったり、a bitを殊更強く発音しており、たまには認めてやろうというような傲慢さがうまく表現されている。to extend は to extent あるいは do extend かも知れないが、この点は不明。

教授はこの件はこれで切り上げ授業を続けようとするが、教授のやり方に我慢できないJamalは、言葉尻を捕らえて反撃する。

(P) Now if you can turn to..., you may be seated, Mr. Coleridge. Turn to page one hundred and twenty, the little blue book, that I’m certain…
(J) Further.
(P) I’m sorry?
 (C) Don’t!
(J) You said my skills to extend farther than basketball court. “Farther” relates to distance. “Further” is the definition of degree. You should have said “further”.
(P) Are you challenging me, Mr. Wallace?
(J) (?Not aim whether) you challenged Coleridge.
(P) Perhaps, the challenge should have been directed elsewhere.

普通なら"Sit down, Coleridge."というであろうところを、"You may be seated, Mr. Coleridge."と言っている。「着席してよろしい」というニュアンスで、ここでは目下に対してかけた言葉だが、大西先生の「ネイティブ感覚がわかる英文法」によると、mayが許可を表す場合、話し手の権威を感じさせるということだ。だから目上には使うべきではないだろう。逆に"May I....?"と聞く場合は、相手の許可を求めるへりくだった表現になる。
その昔、トロントのHoliday Innにチェックインした時、手続きが終わった後まだ何か忘れてないかなと躊躇していたら、フロント係から"You may go now."といわれたが、何となく「終わったんだから、さっさと行きなさいよ」という横柄な印象を受けた記憶がある。

Turn to page 120:前回の"Paragraph three starts..."も同じだが、page、paragraphなどには冠詞がつかない。これは固有名詞のような扱いになるからだそうだ。one hundred and twentyとandを正しくつけているのもいかにも語学の先生らしい。

I'm sorry?:先にも"Excuse me,"があったが、生徒に対しても丁寧な表現を忘れないようだ。

You said my skills to extend farther than basketball court. “Farther” relates to distance. “Further” is the definition of degree. You should have said “further”.
今回のポイントになる台詞。受験英語でもお馴染みの比較級 fartherとfurtherの混同を捕らえて反撃している。才能の話だから、距離を表す fartherではなく、程度を表すfurtherを使うべきだと言っている。
教授はcourtという語は言っていないので、何故だろうと思ったのだが、それは「君の才能はバスケットの才能以上に少しは広がりがあるようだ」というべきところを「君の才能はバスケットのコートより少しは広いようだ」という意味をなさない文にして、教授の言葉の混同をあぶり出しているのではないかと思う。

Are you challenging me, Mr. Wallace?
字幕は「私を詰問するのか?」。challengeは日本語になってしまっているので使い方に注意が必要な語だとよく言われる。「詰問」という訳からも分かるように、ここでは決してよい意味のチャレンジではなく、相手に正否を問うという攻撃的な意味になっている。安易には使わないほうがいい語だと思う。
訳はきつい感じがするが、映画では冷静さは失わずに慇懃に話しており、ここでもMr. Wallaceと呼びかけることを忘れていない。続いてのJamalの返事はよく聞き取れないが字幕は「あなたも彼(Coleridge)を詰問した」となっている。

Perhaps, the challenge should have been directed elsewhere.
これも婉曲な表現だ。「詰問の方向は(Coleridgeではなく)、他の方向(=Jamal)に向いているべきだったようだ。」

この後、教授は「お前に何ができる」という自信満々の顔つきで色々と文学の引用を試みるが悉くJamalが当てる。恥をかかされた教授はとうとう"Get out!"と叫ぶ。
こうしたシーンが実際に起こるのかどうかは知らないが、学園ものには欠かせないステレオタイプの嫌味な先生役をF.Murray Abrahamが見事に演じている。
総じて嫌味な先生であるが、言葉使いは常に丁寧であり、そこは日本の先生方にも真似してもらいたいところではある。

イメージは別のシーンだが、座っているのがProf. Crawford。IMDbから。

映画については Part Vの方に書こうと思ってはいるが、文学を扱っている割には文学に関しての描写あるいは会話が少ない。単なる引用や技術面の話が少し出てくるだけでその辺りは残念だが、全体には暴力もセックス(関連シーンはあるが)もなく安心して鑑賞できる作品だと思う。ただクライマックスだけはもう少し何とかして欲しかった。

映画の最初の辺りは黒人高校生同士の会話が続くが、彼らの独特のリズムを持った言葉はそのままJazzやR&Bのスイング感やグルーブ感を思わせて小気味よい・・・が、何を言っているかほとんど分からない。

また、バックに流れるちょっとマイルスを思わせるトランペットが中々よい(アランフェスの第二楽章が出てきたときは笑ってしまったが)のと、エンディングに流れる、窓から眺めたバスケットコートにウクレレ伴奏だけのボーカル Over the Rainbowが素敵だ。歌はいつのまにか What a Wonderful Worldに変わり、またOver the Rainbow に戻っていく。その後に、短いマリンバの曲が流れるが、これが赤松氏があまり好きではないという「打ち込み」かな。

おしまい!

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