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2007/04/16

Old Sport!

随分以前から図書館で、借りては読まずに返してまた借りて、を繰り返していた村上春樹訳「グレート・ギャツビー」をやっと読み終えた。

Gatsby_1 読み始めた理由は、有名な本だし村上氏があちこちで触れていたようなので、それからしばらく前に村上訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読んだから、とか色々と理由はあったが、その割には物語りに入り込むまで随分時間がかかった。というよりまとめて読む時間が昨日、やっと取れたからというのが本当の理由だが、それと共にやたらと装飾をちりばめたような文体に馴染むのにも時間がかかったこともある。

村上氏のあとがきによると、本当は英語で読むのがいいらしいが、同時にちょっとやそっとでは取り付けない英語でもあるらしい、だから、いつか隠居したら読むことにしようかとも思うが、そういうことは大体が実現はしないだろうね。

さて、興が乗って読み出したところで、どうもデジャブーな気分、それが何か分かったのは、ギャツビーがやたらと人のことを「オールド・スポート」と呼ぶ場面だ。

Old sportは普通の英語ではお目にかかることはほとんどないと思うが、辞書を見ると"sport"の後の方に「(呼び掛けに用いて)君.*old ~! 君.」というのがある(研究社中辞典)。

この語が何故「でじゃぶー」なのかというと、"Old sport"はクリント・イーストウッド監督のアメリカ南部を舞台にした「真夜中のサバナ(原題"Midnight in the Garden of Good and Evil")」でケヴィン・スペイシーが盛んに使っていた言葉だから、そしてその言葉の正体がなかなか分からなくて、ヴィデオを何度も聞きなおしたりしたからよく覚えているのだ。

Savannah 映画ではケヴィンスペイシー扮するジムウィリアムズが南部エリート風な軟らかい物腰で「オールスポー」と、語り手である記者ジョンケルソー(ジョンキューザック)にいつも呼びかける。意味は場面からすぐに分かるが「スポー」と聞こえる単語がなかなか分からない。まさかスポーツと同じ語だとは思わなかった、そんなたった一語だけのことからグレートギャツビーを読むにつれて、「真夜中のサバナ」がますますオーバーラップしてしまった。

小説の舞台は東部、ニューヨークにも拘らず、なんだか南部のような印象がどうしても拭えなかったのは、そんな映画のイメージがちらついたから。それに舞台が1920年代ということや、ニューヨークといってもマンハッタンが主舞台ではないから僕の知っているニューヨークとは雰囲気が違うということなのかもしれない。

小説について語るのはなかなかと難しい。いい小説だと思うし、村上訳も素晴らしいと思う。ハリウッド映画風な物語ばかりに慣れると、こんなアメリカもあるのだと改めて実感するが、1920年代のアメリカだから、今ひとつイメージをどう捉えていいかが分からないところもある。特に村上氏自身、現在に生きる人々として訳したかったといっている面がその1920年代という舞台をぼやけさせている面もあるような気がする。まぁ、それは村上氏の望んだことだから仕方あるまい。

小説はそれとして、非常に強く感じたのは、クリントイーストウッドは「真夜中のサバナ」の制作に当たって絶対に「グレートギャツビー」を意識していたに違いないということだ。「真夜中のサバナ」は実話に基づいているとか、舞台は南部でもっと現在に近い時代だとか、登場人物の背景なども違いがあるとか、色々とあるのだが、それを超えて非常に共通した点を多く感じる。

むしろ事実を元ネタに利用してイーストウッドが「グレートギャツビー」をリメイクしたのではないかとも勘ぐったりする。小説のグレートなギャツビーと彼に相当する映画のウィリアムズの人間性はかなり違うのだけれど、それに対応するキャラウェイとケルソーという人物設定は類似点が多いと思う。

まぁ、これは僕のひねくれた見方に過ぎないのだけれど、グレートギャツビーが好きな方は、一度「真夜中のサバナ」を観てみると面白いかと思う。「どこに共通点があるの!」ッていわれるかもしれないが、それとは関係なく見て損はしないと思うお勧め映画ではあります。主役を食ってしまう強烈なスターも出ます。

グレートギャツビーの最後にキャラウェイが語る言葉は何だか「風とともに去りぬ」のスカーレットオハラの最後の台詞 "Tomorrow is another day."を思い出させるのだが、これがやはりアメリカらしい結末なのだろうな。

冒頭のイメージは図書館で借りたものだが、アマゾンなどにある表紙とは違うのだね。愛憎、いやいや愛蔵版なので付録がついている。その付録「『グレートギャツビー』に描かれたニューヨーク」をこれから読もうと思う。

映画の「華麗なるギャツビー」は観たことはないけど、ネットでの評価は分かれているようだ。観るべきか、迷うところだな。

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コメント

こん**は、ついにtakiさんもギャツビー取り上げていただいたんですね。拙ブログでも何回か話題にしていますが、村上春樹訳に関してはたしかに「old sport」をどう訳すかが一つのハイライトだったのですが、見事に肩透かしを食らいました(^_^;)。春樹氏がそれでよくても「オールドスポート」が日本語の文章の中に入っているのは違和感ありまくり、やはり野崎孝氏の「親友!」の方がどう考えても自然な日本語ですよね。

>本当は英語で読むのがいいらしいが、同時にちょっとやそっとでは取り付けない英語でもあるらしい

拙ブログでも冒頭の文章で挫折数回と書きましたが、最初の状況把握を乗り越えてしまえばtakiさんならそんなに難しくはないですよ。日本語で一度読まれたのならなおさらです。老後にとっておかずに是非読んでください。特に最後の数行はフィッツジェラルド渾身の美文だと思います。

ちなみに映画は複数作られているようですが、当然ロバート・レッドフォード&ミア・ファロー版でしょうね。原作に忠実に作りこまれていますから、原作を気にいられたら観て損は無いと思います。

投稿: ゆうけい | 2007/04/17 14:07

ゆうけいさん、コメントをありがとうございました。
改めてブログを読ませていただきましたが、昨年12月のゆうけいさんの記事がこの本を読んでみようと思ったきっかけだったと思い出しました。図書館で貸し出し中でしたので、実際に手にしたのは3月になってからだったので、すっかり忘れていました(年を取ると昔のことは思い出すけど、最近のことはすぐ忘れます)。
"Old sport"は僕はすでになじみのある表現だったので、違和感は感じませんでしたが、そうでない人には奇妙でしょうね。
ただギャツビーがブキャナンに対してもキャラウェイと同じように"old sport"と呼びかけるところが印象深いところですが、これを「親友」としたり他の言葉に置き換えると少々イメージが変わってしまうと思います。それと「親友!」というのとはちょっと違うような気がします。
最初の状況把握は村上訳でもすんなりとは越えられませんでしたが、英語版にも挑戦したいと思います、いつになるか分かりませんが。

投稿: taki | 2007/04/17 22:42

私はちょうど今村上春樹訳の『グレート・ギャツビー』を読み返しています。同時にYoutubeで英語学習者向けに文章を簡略化した「THE GREAT GATSBY Learn english through audiobook」を聴いています。「old sport」はそれを聞かされたニックたちにとっても耳慣れない「なんじゃ、それ?」と思わせるギャッツビー独自の言い回しだったのではないでしょうか?それがギャッツビーという人物の不可思議さを象徴しているというような。だから「親友」なんて訳の分かる日本語に翻訳してしまっては正しいニュアンスが消えてしまうように思います。訳のわからない「オールド・スポート」だからこそ、原書に忠実な雰囲気を伝えてくれるんじゃないかなぁ。

投稿: たもつ | 2019/10/09 08:40

たもつさん、コメントをありがとうございます。

おっしゃるとおり私も「親友」というのはニュアンスが違うと思います。

英語のリスニングで楽しまれているのですね。

この投稿は12年以上前のものなので、ギャツビーのことはすっかり忘れてました。

たもつさんのおかげで再読してみようという気になりました。今は好きなジャズのことを調べたりして1920年代のアメリカについて多少の知識があるので、また違った楽しみ方ができそうです。ありがとうございました。

投稿: taki | 2019/10/12 20:50

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