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2008/11/30

真珠の女-コロー展@神戸博物館

この秋はモーリスルイス展ハンマースホイ展など、関東圏での展覧会には行ったのだけれど、地元では中々行く時間が取れなかったのだが、ゆうけいさんのレビューに刺激されて、昨日、やっと神戸博物館のコロー展を家内と一緒に見てきた。

Dscf2294 時間の節約から、自宅から車で高速を飛ばして、三宮まで直行。今までも何度か行っている市役所南にある東遊園地公園の地下にある駐車場に入る。他にもっと近い駐車場もあるようだが、ここしか知らないのだ。

駐車場から出ると、公園から西への通りはルミナリエの準備中で、毎年のことだろうがイタリアの職人さんの姿も見えた。ルミナリエは、二年目と三年目には見に来たのだけれど、それからは来ていない。当時と比べると、規模も小さくなったような気がする。経済も冷え込んできた昨今、地元の活性化として何とか盛り上げたいところだろうが、いつまで続けられるのだろうか。このまま消えるか観光資源として定着するか、正念場というところだろう。

Dscf2297 そのルミナリエのアーケードを抜けていくと、左手に神戸博物館がある・・・ゆうけいさんの記事とおんなじだ、当り前だけど。

会期も残すところ、あと一週間、混雑しているかと思ったが入り口は意外と人が少ない。当日券を購入するが、CoopやJAFのカードを見せれば団体料金に割引となるので、二人で600円のお得だ。
入り口はすいていたものの、3階の会場に入るとやはり人が一杯だ。でも近よって見れないというほどではなかった。

展示はコロー以外の作品もあるのだが、通常の展覧会のように作家で分けているのではなく、題材や描き方などで分けている。だから、少々戸惑う。

Michallon 最初は自画像だが、その後、随分とコントラストのある風景画がある。コローも随分と明るい絵を描いていたのかと思っていたが、家内にあれは違うと教えられた。彼女は以前は油絵を描いていたので、その辺りはすぐに分かるらしい。慌てて最初に戻って作家名を見ると、ベルタンにミシャロン(左)という名前になっていた。おかげで家内としばらくは、はぐれてしまった。

Dscf2306 確かにそういわれてみると、コローは全体にコントラストが弱めで、ココアパウダーのような、と表現したくなるような、薄茶色がかった色調が多い。それが森の絵の、全体にグレーがかった色調に発展していくのだろうか。右は、購入した図録の、そんなココアパウダー調の絵のページ。「ローマ郊外の水道橋(左)」と「プッサンの散歩道(右)」。

その後も、ここの展示はやや上から見た構図、こちらの展示は水平から見ている、などと家内の解説を聞きながら見ることになった。

さて、展覧会の内容については、ゆうけいさんや、例によってTakさんが素晴らしいレビューを書かれているので、ちょっと違った視点で書いてみたい。

ゆうけいさんが書かれていた下地についてだが、確かに紙が多いのには驚いた。それも「カンヴァスに貼った紙」などと書かれている(画材ではキャンバスと書くことが多いが、美術館ではカンヴァスとする方が多いみたいだ)。紙を貼ってから描いたのか、紙に描いてから貼ったのか分からないが、カンヴァスに描かずに紙を貼るということは、紙を使いたかったということなのだろう。厚紙も油絵の下地としては割と優れているという話を修復関係の本で読んだような記憶があるが、実物を見たのは初めてだと思う。

木に描かれたものもあるが、もともとカンヴァスが使われる以前のルネサンス頃までは油絵は主にオークやポプラなどに描かれていたし、油絵は本来は硬い下地に塗る方が適しているので、めずらしいことではない。ダヴィンチのモナリザも板に描かれている。ただ板は大きさが限られるし、重くて不便なのでカンヴァスに取って代わられたのだ。しかし最近は薄い合板で作ったパネルがあるので、それに描くこともあるようだ。

額縁に透明なアクリルカバーが入っているものと入っていないものがあるが、最近のカバーはほとんど反射がないので、博物館の暗い照明ではほとんど気にならなかった。カバーを入れるということは、一旦、額縁からはずしているということだから、修復をしている絵なのかと思ったりしたが、どうもよくは分からなかった。所有者や所蔵美術館の考え方もあるのかもしれないが、ルーブル所蔵でもカバーがあったりなかったりなので、これも根拠はない。

ただ、修復したと思われる絵の多くは表面に保護ワニスを塗りなおしているためだろうが、光の反射がきつい。筆などのタッチ(テクスチャー)やヒビ割れなどの凹凸が、斜め上からの照明で反射して見辛いのが残念だった。修復していないと思われる作品は反射がなくて見やすいが、逆に何となく薄汚れた感じもするね。

一つだけ、タイトルは忘れたけれど、大きめのアクリルカバーで全体を覆っていて柵がない作品があったので、カバーに鼻がつくくらいに近寄って、まじまじとヒビ割れなどを観察してしまった。アクリルカバーに鼻息の曇りがついてしまったので慌てて離れたのだ。

・・・などと、絵を鑑賞するというよりは、観察してしまうのは職業病かもしれないね。

今回は、タイトルを見る前に絵を鑑賞し、その後、気になったらタイトルを見るようにした。これは最近読んだ「現代アート入門の入門/山口裕美」に書かれていたことなのだけれど、確かに現代アートでは抽象的な絵はタイトルで印象が束縛されることがあるだろうが、コローのような絵では、タイトルもほとんど見たまんま、みたいな、なのでこれはあまり気にすることはなかったようだ。

さて、今回一番の話題であったのが、ポスターにもある「真珠の女」なのだけれど、これも反射がきつい。この反射が何故か、髪の毛からその終端にかけての部分にしか現れておらず、Takさんも書かれているように、まるでソバージュをかけたように見える。あるいはレースの飾りか。ゆうけいさんが書かれていたように、あたかもわざと効果を狙っての技法かと思われるほどなのだが、どうもそうではないらしい。

Ws000002 右の画像は、以前に放送された「新日曜美術館」の「コロー、静かなる森のささやき」の録画から取ったものだが、展示を映したものなので反射が写っている。分かりにくいが、右側の髪の毛や、顎の左横の背景に白い点々が見えるのがそれだ。実際はもっと多い。

ポスターや図録の表紙の写真は反射しないような照明で写したらしく、そんな反射はないので、左下にある画像と比べるとはっきりするだろう。

今回は上の方の写真にあったように、めずらしく図録を買ってしまった。前回のハンマースホイ展で買ってしまったので、抵抗が薄らいだこともあるけれど、やはり後でゆっくりと見てみたいと思ったからだ。ただしハンマースホイの図録でもそうだったが、絵の写真は見るけれど、解説はほとんど読まない。

Pearl さて、その図録の表紙をスキャンしたのが左の画像だが、ちょうど反射で光っていた部分にシワがよっているのが分かる。これは油性塗料でたまに見られる塗膜欠陥と同じ現象のように見える。

Pearl2 どうやらクラックではなく、描きなおした際の上に塗った絵具の表面が先に乾いて皮はり状態になり、塗膜の内部あるいは下に塗った絵具が乾燥不十分で軟らかいためにシワがよったのではないかと思う。

右が、顔の横の背景でシワがはっきり分かる部分の拡大画像だ。頭の上の方の髪の毛のあたりは、表紙の写真ではよく分からない。シワだけでなく、クラックもあるかもしれない。
塗膜欠陥のシワについては、こちらに解説と写真がある。油絵具に使う亜麻仁油などの植物油は、共役二重結合ではないが、やはり二重結合に酸素が介入して酸化して乾燥(硬化)していくので、同じような現象が起こることがある。

Ws000005 さらに「新日曜美術館」では、最初は表情が違っていたことをX線写真で示していたが、その画像を見ると、シワのよっている背景の首の左横部分に黒い痕が見える。

この画像からの、僕の単なる推測だが、もともとは髪の毛か何かが描かれていた上に塗り重ねたためにその部分にシワがよったのではなかろうか。全体に髪をかなり描き変えたために、ソバージュをかけたようにシワやクラックが入って凹凸ができ、保護のために塗った光沢のあるワニスが光って見えているのだと思う。

やれやれ、随分とオタクな内容になってしまったけれど、こんなことを考えながら見ていたわけではありません。後から図録を見て考えたことです。

さて、出口は建物の裏側になるが、そこに道案内の掲示がある。これを写してくればよかったなぁ。

掲示には「←海側・山側→」とある。元町大丸のエスカレーターの掲示にも同じことが書いてある。

Dscf2304 神戸市街地は東西に長いうなぎの寝床のような狭い土地で、北側には常に六甲山系が見え、南は海と分かっていて、ほとんどの地区が海側へ傾斜しているので、方向感覚が全く不要な土地なのだ。だから、神戸人、いわゆるコウベッコは極端に方向音痴だ。だから美術館に入って出てくると、もうどちらを向いているか分からない。東西南北でいわれてもピンとこないが、山側とか海側といわれると、すぐにわかるのだ。

Dscf2303 帰り道、今年は急激に寒くなったりしたからか、街路樹がわざとらしいくらいに色づいている。

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コメント

こん**は。私が疑問に思っていた事を詳細に解説していただきありがとうございます。まるでそのために行っていただいたようにさえ思えて恐縮至極です。奥様もお詳しいのですね!

ほんと、東京へ行くと東西南北がまるで分かりません(涙。昔は晴れた日には富士山が見えて分かったんでしょうか(笑。

投稿: ゆうけい | 2008/12/01 23:50

ゆうけいさん、コメントをありがとうございます。
もちろん、そのために行ったのです・・・いやジョーク、ジョーク(笑。お役に立てたなら幸いです。
ゆうけいさんのBlogを読まなかったら、気になりながらも結局は行かず仕舞いになったかもしれません。こちらこそ、ありがとうございました。

「海側、山側」なんて表示のあるのは神戸くらいではないでしょか。私も大阪の地下鉄に乗ると出口で方向が全く分からなくなります。昔は生駒山が見えたんでしょうか(笑。

投稿: taki | 2008/12/02 22:29

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受信: 2008/12/08 17:51

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