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2008/12/14

モーリス・ルイス 秘密の色層-II

随分と間があいてしまったけれど、川村記念美術館 モーリス・ルイス展のエピローグのプロローグ・・・って、なんのこっちゃ!? ただし展覧会は11月30日に終了しています。

Green_and_gold 展示会タイトルの「秘密の色層」には、ルイスの制作の謎や独特な表現の秘密に迫ろうという意図が込められている(と思う)。美術館サイトの解説には三つの秘密について書かれている。

制作現場の秘密
色彩の秘密
タイトルの秘密

9月28日に神戸の西端から千葉県佐倉までわざわざ行ったのは、その秘密についての講演、ゲッティ修復研究所シニア・サイエンティストであるトム・ラーナー博士による「Morris Louis and Magna」を聴きに行くのが第一の目的だった。

演題にあるMagnaというのは何か? 美術館の解説を引用すると:

色彩の秘密
1954年、ルイスは「マグナ」というアクリル絵具に出会いました。この絵具は、開発当初にポロックやニューマン、ラインハートなど当時アメリカで活躍していた画家たちに配られましたが、油絵具の扱いに慣れていた彼らは、サラサラとした質感のアクリル絵具は使いづらいと判断し、メーカーに改良を求めました。一方、ルイスはその粘性の低さを大変気に入り、以来、マグナ以外の絵具を一切使用しませんでした。1960年には、ルイスの希望により、薄めても鮮やかに発色するマグナ絵具がオーダーメイドで作られ、この色材がルイス作品の特徴に大きく寄与しました。

先日、近所のショッピングセンターで家内が買い物をしている間、暇つぶしに本屋をのぞいていたら、リキテンスタインの画集を見つけたので開いてみると、作品の下に「油絵具とマグナ」と書かれていた。普通は使われた材料については、「油絵具」とか「水彩絵具」とか「テンペラ」とか、一般名が書かれているのだが、何故かマグナという、多分ほとんどの人は知らないであろう名称が書かれている。マグナというのは一般名ではなく商品名である。不思議といえば不思議だ。それほどマグナという絵具が特殊だということだろう。

Eyck_arnolfini_2 油彩画、つまり油絵具で描いた絵はおよそ500年の歴史があると言われるが、その間、新しい絵具というのは発明されていない。左は油彩画技法を確立したといわれるvan Eyckの「アルノルフィーニ夫妻(1434年)」。

Giorgio_morning 産業革命のときイギリスで現在の透明水彩が確立されたというから、それを勘定に入れてもよいのだろうが、水彩絵具そのものは油絵具以前からあったので、全く新しいというわけではない。バージョンアップみたいなものかと思う。右はターナーの水彩画「San Giorgio Maggiore, Early Morning (1819年)」。

Siqueirosmuralsanmiguel 近代の絵具が始まるのは、第二次大戦前くらいからで、メキシコの画家シケイロスなどが壁画用に工業用塗料を転用したのが始まりといわれる。右はWikipediaから、シケイロスの未完の壁画(1940年代)。

ちなみにシケイロスたちの壁画はメキシコ革命に密接に関係している。芸術は政治や経済と関係してはいけないような話もあるが、実際には無関係ではいられない例だろう。詳しくはWikipediaなどをご覧ください。

マグナは工業用の原料として発明されたアクリル樹脂を絵具という形にした最初のものということで、それまでの絵具とは異なる全く新しい絵具だった(ただし現在、アクリル絵具というと水で溶いて使う水性の絵具だが、マグナは溶剤つまりはシンナーで溶いて使う絵具である)。

Dscf1931 マグナを作った会社は今はなくマグナも生産されていないのだが、実をいえば、昨年、アメリカ出張した際に訪問した会社の創業者がマグナの開発に携わった本人であり、今年も来日されて僕が通訳で随行した方がそのご子息なのだった。

写真は昨年の訪問の際に撮ったショーケースだが、MAGNAという文字が真ん中辺りに見えている。マグナそのものはなくなったが、その歴史を正統に受け継いでいるということだね。

ということで、しばらくこの話題は続きます。

関連エントリー
- モーリス・ルイス 秘密の色層-I

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コメント

私の好きなディック・フランシスの小説にアクリルで絵を書く画家が主人公になるのがあったんですが(どの作品かは思い出せない)、それのことかな? 水性か油性かということは書かれていなかったようでしたが。

投稿: PICKS CLICKS | 2008/12/15 20:56

検索してみたんですが、次の本でしょうか。

To the Hilt
http://www.goodreads.com/book/show/8543.To_the_Hilt

このページの下の方に次のようにありました。
Character: Alexander(Al) Kinloch
Profession: Painter(acrylics, mostly golf scenes)
Setting: Scotland/England
Notes: Painting, hiding things, smashing ending

出版が2004年とあって最近の本のようですから、現在一般にある水性のアクリル絵具ですね。モーリスルイスとは時代が違うと思います。現在は油性のアクリルはほとんど使われていません。

投稿: taki | 2008/12/15 23:03

日本語版では「不屈」というタイトルで出ていたもののようですね。

今ちょっと手元にないのですが、絵を描くシーンも多かったので、もう一度読んでみたいです。

投稿: PICKS CLICKS | 2008/12/25 10:32

アマゾンで内容紹介がありました。
今読んでいる本や未読がなくなったら図書館で探してみようかと思います。

ディックフランシス 不屈
内容(「BOOK」データベースより)
貴族の血を受け継いでいながら、ひとりスコットランドの山中で孤独な暮らしを続ける青年画家、アリグザンダー・キンロック。ある日、彼は自分の山小屋で待ちかまえていた四人の暴漢に襲われ、あやうく命を落としかける。闇雲に「あれはどこにある?」と脅されたあげく、わけのわからぬままに崖の上から突き落とされたのだ。事件が起きたのは、アリグザンダーが母の屋敷へ行こうとしていた矢先だった。ビールの醸造会社を経営している義理の父が、心臓発作に倒れたとの知らせを受けたのだ。全身の怪我をおして屋敷に赴いた彼は、義理の父の会社が倒産寸前であることを知る。経理部長が莫大な資産を横領して姿を消したらしい。しかも、会社が主催する障害レースの賞品である純金のカップも行方がわからない。会社の危機を救うべく奔走をはじめたアリグザンダーは、自分を襲った暴漢は横領事件に関係があるのではとの疑念を抱くが…。

内容(「MARC」データベースより)
スコットランド貴族の血を引く青年画家アリグザンダーはある日突然見知らぬ4人の男に暴行を受け、ビールの醸造会社を営む義理の父アイヴァンの相続問題とキンロック家伝来の宝物の管理をめぐるトラブルに巻き込まれてゆく。

投稿: taki | 2008/12/25 23:05

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