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2008/12/23

天明屋尚

美術ネタが最近は多くなっているのは、仕事関係であるけれど今頃になってそれを意識しだしたのかもしれない<-もっと早く気づけよ、といいたくなるが。

Fifa 天明屋尚(てんみょうや・ひさし)という名は全然知らなかったのだけれど、鎧武者がボールを蹴っている2006年ワールドサッカーのポスターなら僕も覚えているし、ご存知の方も多いと思う。

この10月に東京に行った際、東京支店の同僚から天明屋さんが個展をしているので是非見て欲しいといわれて、しかしちょうどアメリカからのお客さんの通訳で気疲れしていたしその時はどのような絵かも知らなかったし時間があるなら「ハンマースホイ展」をみたかったし、などなど実はあまり気が進まなかのだが、僕も開発に関った絵具でほぼ全ての作品を制作していてその保存性を気にされているとのことで、「お客様は神様」、行かねばなりませぬ・・・ので中目黒で同僚と待ち合わせてミヅマ画廊をたずねた。

天明屋氏はネオ日本画の絵師を名乗り、

婆娑羅、傾奇者、天明屋尚。
     この男、孤高の絵師なり。

という、何とも奇矯なキャッチフレーズを持っている。

日本画という語はよく聞く言葉だが、実はとてもいい加減な語である、というのは美術界では常識なのだが、要するに西洋絵画が入ってきた明治初期にそれに対する、それまで日本にあった絵を十把一絡げに「日本画」と呼ぶようになっただけのことである。

だから狩野派だろうが浮世絵だろうが、え~、あとは覚えていない、いや知らないけれど、とにかく江戸時代までに既に多種多様な様式の絵画があったものをひっくるめてしまったもので、たとえばスパゲッティーイタリアンなんていうのと同じなのだ・・・違うかぁ! -伊丹十三さんによるとイタリアにはイタリアンなんていい加減な名前のスパゲッティーはないのだそうだ

現在ではとりあえず日本画といえば何となく漠然としたイメージを持つ人は多いだろうし、とりあえず日本画という分類で描いている画家も多い。

しかし日本画というジャンルの現代の展覧会を見に行くと、ほとんどコンテンポラリーアートと変わらないような気がする作品が多くある。それでは何が西洋絵画ジャンルの日本のコンテンポラリーアートと違うのかというと、大抵の場合は「日本画材料を使っている」といのが答であるらしい。

日本画の材料については僕も大して詳しくないので簡単にいうと、膠(ニカワ)と岩絵具(顔料)が主な成分であり、基本的には画家が自分で原材料を買ってきて絵具を作る。

Maedaj それに対して天明屋氏は現代の絵具であるアクリル絵具を使っているために、日本画界からは異端視されているということらしい。同じような例かどうか分からないが、昨年亡くなられた前田常作氏(画像右)は曼荼羅絵で有名で絵を見ると日本画のように思えるけど、アクリル絵具を使っていて洋画家となっているから、日本画ではないらしい。どうも素人にはよく分からない。

さて、ミヅマ画廊は結構有名らしいのだけれど、行ってみると雑居ビルのような古い建物の中にある。

白い壁に鮮やかな、そしてDead Matte、つまり完全なツヤ消しで細密に描き込まれた大きな作品が何枚か展示されていた。

確かにこれは日本画と呼ばなくてどう呼ぶのか・・・、浮世絵をメートル単位に拡大したらこうなるのかもしれないし、絵具を開発した身から見るとこれはその特性を最大限に活かしたスタイルだと思える・・・それだけに保存は極めて難しい・・・そんな無責任な・・・。

残念ながら平日のお昼ごろで、天明屋氏はいないし訪れる人もほとんどいなかったが、これはちょっとした衝撃的出会いだった。

ただ氏の絵は日本独特の文化のある面を題材にしていて、それは武者絵や入墨などであり、見方によっては右翼的かもしれず、60~70年代世代の僕としてはやや抵抗のある、できれば避けて通りたい画題でもある。(作品は天明屋氏あるいはミヅマ画廊のサイトをご覧ください。)

現在、日本における若手、といっても40代だが、注目されている人として、天明屋尚、会田誠、山口晃の3人がよく引き合いに出るようだ。村上隆もいるがちょっと系統が違うだろう・・・多分。

Tenmyoya ということで何がいいたいか分からなくなってきたが、とにかく気になるのでネット検索していると、ニアイコールというシリーズで天明屋氏の制作風景や日常をドキュメンタリーにした映画があって、それがDVDになってアマゾンでも手に入ることが分かった。

こうしたドキュメンタリーが日本で作られて商売になるのか、ちょっと驚きではあったけれどアマゾンでユーズドが出ていたので、興味があるし仕事にも役立つだろうと買ってしまったのが二週間ほど前、今日、やっと全部を見ることが出来た、というか実際にはほったらかしていたのだが(今、確認したらもう品切れになっていた)

絵やDVDの写真からはかなり強面のお兄さんのような印象を抱くが、DVDで話す天明屋氏はとても穏やかで落ち着いた人に見える。確かに絵の題材は強面かもしれないし、鮮やかな色がちりばめられているが、どっしりと落ち着いた印象もあった。

DVDの内容は、天明屋氏のアトリエでの制作風景、子供の頃の話、影響を受けた河鍋暁斎などの話、などなど盛りだくさんなのだが、入墨とか武者とか、今ではアナクロとか右傾的とか、敬遠されがちな、あるいは現代日本では日陰にあるような文化も実は日本の一面として脈々と長い歴史を生き抜いているのだということに気付かされる。

このテーマは何もなければ存在すら意識に昇らす通過することさえないものだったろうが、一旦、気になりだすと、決して僕の守備範囲ではないのだが考えざるを得ないような気がするし、とても重いテーマだ。

それはジャズというアメリカ文化を趣味としてMySpaceに自作曲の演奏をアップした頃から、自分が日本人であるということが世界中につながるMySpaceにおいて表現できるのか、という疑問を持ったことと大きく関係している・・・かもしれない・・・違うかぁ!

追記 09.2.7
- より詳しい内容についてはTakさんのレビューをご覧ください。
天明屋尚展「闘魂」/弐代目・青い日記帳

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