前回ご紹介したPhil Woods and His European Rhythm Machine(ERM)はどうやら少なくとも5枚のアルバムを出しているらしい。
ALIVE AND WELL IN PARIS(pathe-emi/1968年)
At the Montreux Jazz Festival(MGM/1969年)
At the Frankfurt Jazz Festival(Atlantic/1970年)
この後に前回のPierre Cardinレーベルのアルバムがあるが、その後にもう一枚、Cardinレーベルから1972年のライブ盤があるようだ。
今日は僕の持っているERMをmp3にデジタル変換し、プレーヤーについてきたソフトで曲ごとにカットしてデータを入力、そしてここでその片鱗をご紹介・・・、で、一日つぶれちまった。
Phil Woods and His European Rhytm Machine
(Pierre Cardin, CAR333U/France, 1970)
1. CHROMATIC BANANA Phil Woods
2. ULTIMATE CHOICE Gordon Beck
3. THT LAST PAGE Phil Woods
SANS MELODIE Gordon Beck
4. A LOOK BACK Gordon Beck
5. THE DAY WHEN THE WORLD... Gordon Beck
大まかな紹介は中古レコードのORGANIC MUSICにうまくまとめられているので、そちらもどうぞ。音源紹介もあります。・・・\5,670で販売ですか、まぁ、売る気はないですが。
全体としてはヨーロピアンオーソドックスジャズ(そんなジャンルがあるかどうか知らないけど)ではなくて、クロスオーバーとかフュージョンとかが出てくる前の、1960年代後半のジャズロックになると思う。
その雰囲気がよく出ていて僕の好きな曲が最後に収められているGordon Beck作曲のThe Day When The World...だ。
「_a_look_back_the_day_when_the_world__02_02.mp3」をダウンロード
この音源では目立たないけど、よく聴いたためか他の曲よりもノイズが多かった。
洒落たジャケットは前回にご紹介したが、中に書かれているノーツも面白いというか、ふざけた内容だ。ただかなりくだけた英語のようで、よくわからないところもあるのが残念だが。
内容はアメリカのファンからの「昔の演奏はどこへいった、今のPhil Woodsの音は聴いていられない」というような手紙に答えるというものだ。
Question 1. What happened?
Answer 1. Good question.
Qustion 2. Where is the melody?
Answer 2. The melody was first reported missing shortly after Glenn Millers plane disappeared over the channel in '44, and has been rumored to be alive and well in Buenos Aires.
Question 3. Where's that big fat tone?
Answer 3. Due to pollution of bamboo cane the reed industry has been forced to manufacture saxophone reeds from surplus Army barracks shingles. (I hope this isn't too technical for your obviously limited mental faculties.)
Question 4. And what the hell is a CHOROMATIC BANANA?
Answer 4. I haven't the faintest idea.
メロディーはどこへ行った・・・グレンミラーの乗った飛行機が1944年にドーバー海峡で消息を絶って以来、見つからないが、ブエノスアイレスで元気にやってるというウワサ・・・デビューアルバムの"Alive and Well in Paris"をもじった台詞をさりげなく入れているね。
音の悪さについては、ちょうどこの時代に大きな問題になっていた公害もうまく取り入れて、竹の(に対する)公害のために軍の兵舎の余った屋根板からリードを作らなければならないのが原因だとかいっている。
最後に「ERMとは?」という質問があって、ちょっとふざけたメンバー紹介をしているのだけれど、その最後に:
And no matter how you slice it(ERM), it is a shifty banana. Or as the man said...."Ask not for whom the bell tolls, the banana peels for you. YOU TWIT!"
ヘミングウェイの小説のタイトルのもとになったイギリスの詩人、John Donneの詩をもじっているらしい。「誰がために鐘は鳴ると問うなかれ、バナナは汝のために」とでもいうのだろうか。
ERMはどうスライスしても胡散臭いバナナとか、やたらとbananaが出てくるわりには、Question 4には「知らんもんね~」みたいな答えをしているけれど、Urben Dictionaryにあった次の定義が当たっているのかもしれない。
a slang word derived from the old saying "bananas" used to describe someone that was crazy. Used now to describe anything in style or cool.
最近、流行りのTwitterは「さえずり」というような意味だけれど、You Twit!というと俗語で「バカ、マヌケ」とかの意味らしい。その後にこんな謝辞もある。buggingは俗語で「イライラさせる」とのこと。
And Special Thanks:
..., to PIERRE CARDIN for not bugging us about the way we dress.
..., and above all to the many record companies in the States who made moving to France possible, if not imperative. And last but not least to the three gentlemen who comprise the European Washing Machine, the cleanest band in the West
カルダンが服装についてゴチャゴチャいわなかったこと、・・・そして何よりもアメリカのたくさんのレコード会社がフランス移住を可能にしてくれたこと(イヤミでしょうね)。そして西洋(?)で一番きれいなバンド、欧州洗濯機適合の紳士方(メンバーですね)に感謝・・・
ということで、Chromatic Bananaはこんな曲です。
「chromatic_banana_01.mp3」をダウンロード
スタジオ録音なのにアルバムのトップからいきなりメンバーの声で始まったりするのは斬新だった印象がある。
ORGANIC MUSICにスキャットとか書いてあるHenri Texierの声とベースのユニゾンソロがそのページの下にあるCHROMATIC BANANAのリンクで聴けます。おもろいです。そのさらに下にあるA Look Backは、キースジャレットのRuta & Daitya(ECM)を思い出すけど、その後の音楽の方向を現わしていたアルバムかもしれない。
ノーツの最後に6小節の楽譜があって、最初の4小節にはコード(音符)が書いてあり、残りの2小節はブランクになっている。ブランクをうめて送ってくれた方、ひょっとして正解だったら可愛らしいプラスチック製のchromatic bananaプレゼント、ただしアメリカ人は既に目いっぱいバナナだから対象外・・・だそうです。
アルバムの最後には、Woodsのお子様によるメンバー紹介があったりして、ワイルドでエネルギッシュな一方で、とてもアットホームなアルバムです。これはノーカットで:
「Narration.mp3」をダウンロード
Phil Woods: Alto sax, etc.
Gordon Beck: Electric Piano, etc.
Henri Texier: Accoustic bass, etc.
Daniel Humair: Drums, etc.
そうそう、昔、英会話学校で習ったイディオムに"Close, but no banana"というのがあった。bananaはいろんな言葉に変わることがあるらしいけど、「当たらずとも遠からず」・・・、というよりは「遠からず、でもハズレ」という意味・・・をもじったのが今回のタイトル・・・でした!
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