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2011/05/22

倉敷で雑知識 & 高橋由一作品 中野で発見

2009年7月、修復学会で倉敷出張したときに聞いた話などを書きかけでほったらかしていたのがあったので、そのまま投稿します。

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絵画修復家には女性も多い。展示ブースに来てくださった女性修復家の方から聞いた話しだが、日本の絵画の修復ではアクセサリーとかちょっとでも尖ったもの、画面を傷つけるようなものは身につけてはいけないそうだ。日本画の画面は膠で顔料をくっつけているだけだから、弱いのは確かだと思う。しかし日本の油絵も画面が弱いものが多いのだそうだ。

補足:それに反して本場の油絵は丈夫にできていて、イタリアの女性修復家などはチャラチャラのアクセサリーや尖ったものでも身につけたままで平気で修復をするそうだ。

41v0marbqjl__ss500__3 その辺りのことは「油絵を解剖する/歌田眞介」に詳しく書かれている。この本の帯には「高橋由一の魅力と黒田清輝の不手際」とある。
現在の日本洋画の基礎を築いたといわれる黒田清輝だが、それは同時に形だけを取り入れた西洋絵画でもあったようである。

次の文は検索で見つけた、東京芸大のアーカイヴにあった歌田氏自身による本書紹介文である。

歌田眞介(名誉教授)
『油絵を解剖する』
油画科には、十五世紀以降のヨーロッパの油画技術情報があるに違いない、
と考えていたのが誤解であった。私の入学当時何も無かった。卒業後、絵画組
成研究室(現、油画技法・材料研)に助手(非)としてかかわっていた頃、先生方
の油画を修復する機会があった。乾燥剤の使用過多、溶き油に揮発性油しか
用いないなど、油画材料の性能の限界を越えた使い方をしていることがわかっ
た。
その頃、高橋由一展(神奈川県立近代美術館昭和39年)があり、数点の
洗浄を研究室の仲間と実施した。由一作品に技法的欠陥は無かった。時代が
降るにつれて技術が低下したのは何故か。明治初期、特に由一の技法はどん
なものだったか。先進国の文化受入にあたり先輩達の試行錯誤、すなわち、何
を入れ何を排除したか等々が研究テーマとなった。
本書は、幕末以来約130年の油画移入史のうち、技法や材料の扱い方を検
討してその問題点を明らかにしたいと願って書いた。
(2002年11月教官アーカイヴ展に寄せて)

続いては、本書にある著者の言葉:

旧派の絵は脂っぽくて古い感じがする。しかし、技術面から見ると油絵具の特色を生かした緻密な絵肌になっている。新派は明るく清新な作風だが、絵具の固着力は不充分である。黒田の先生であるラファエル・コラソの絵具は漆のように丈夫である。黒田の油絵はそれほど堅牢ではない。
石油系の弱い溶剤に一部溶けてしまうことがある。新派の連中は師の画風は真似ても技術面の研究はしてこなかったらしい。新旧両派の方法や考え方を高い次元で統一でぎると、すばらしい油絵がでぎるにちがいない。

旧派とは高橋由一など幕末から明治にかけて西洋絵画を学んだ人々のことであるが、本格的な西洋絵画技法を探求し非常に堅牢な画面の油絵を残している。

しかしその後、明治政府がフェノロサ-岡倉天心らの日本伝統絵画重視路線を採用したことにより洋画は美術界の中心から追い出されてしまう。

その洋画界の窮状を救ったのがフランスから帰国した黒田清輝だが、しかしそこでは歌田氏が指摘するように、高橋由一らが培ってきた材料や技法の探究心は軽視され、規則に縛られない自由な描写をよしとする風潮がそのまま現在まで続くことになる。

その頃の状況を森鴎外が嘆いた文が残されているとか、旧派は伝統的な日本画の学習法である模写を取り入れ画力を磨いたが、新派は模写を否定し手順による描画を嫌う。

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・・・と、ここまで書いてあったところで、高橋由一を検索してみたら、何とつい最近に長野県中野市で高橋由一の作品が発見されたと発表があったそうだ。何とも奇遇だ。

 信濃毎日新聞 5月19日(木)

日本で最初の本格的洋画家 高橋由一作品 中野で発見

Takahasi 中野市で発見された高橋由一作の油彩画(中野市教委提供)

「鮭」などの代表作で知られ、日本で最初の本格的な洋画家とされる高橋由一(ゆいち)(1828~94年)が描いた油彩の肖像画が中野市内で新たに見つかったと、同市教育委員会が18日、会見で明らかにした。北信濃の豪農として知られた同市江部の「山田家」当主を描いた作品で、制作過程などを記した山田家側の日記や書状もあり、絵と合わせて黎明(れいめい)期の日本洋画史を研究する上で貴重な資料といえそうだ。

(詳細は信濃毎日リンク先を参照ください)

 

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