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2012/04/08

楽園のカンヴァス 読みかけ

ゆうけいさんお勧めの「楽園のカンヴァス/原田マハ」を図書館で予約して、先週やっと借りることが出来たので読んでいる。

Canvas_2一気に読んでもいいのだけれど、何しろ通勤電車の中でしか読まないし、好きな美術を題材にした小説だから、色々と考えたり想像したりしてゆっくりと楽しみながら読んでいる。

小説については僕がごちゃごちゃ書くよりも、ゆうけいさんのブログをご覧いただいた方がよいと思うから書きません。しかし美術に関心がないと面白さも半減ではないかな。他人事ながらそんなことが気になってしまう小説ではある。

原田マハという作家は実は全然知らないのだけれど、公式サイトというのを見るとかなり売れっ子の作家で、作品も映画化されたりしているらしい。経歴も相当に華やかというか、しかしこれだけの経歴だからこそこの小説も書けたのだろうとも納得できる。

ただ、僕がどうこういえるもんでもないけれど、文章力としては超一流とはいえない気がするけどね。まぁ、同時に読んでいるのが村上春樹訳の「熊を放つ/ジョン・アーヴィング」だから比較するのも酷かもしれないけれど、時々わざとらしいというか作為的な表現があったりするのが気になった。でもストーリーにどんどんとのめり込んでいくとそれもあまり気にならなくなったから慣れてしまったのかな。

さて、どうでもいいことなんだけれどちょっと気になったのが修復士(コンサバター:Conservator)という語だ。コンサバターとは絵画を保存修復する専門家だが、普通は修復家と訳すことが多い。

英語だとConservatorですんでしまうけれど、日本語で修復家といってしまうと何となく独立して活動している専門家をイメージしそうだ。しかし小説の中に出てきたのはMOMA(ニューヨーク近代美術館)の中の修復部門で働いているコンサバターだから、修復家というよりは修復士といった方がふさわしいということだろう。僕は今までconservator=修復家と思い込んでいたのだけれど、修復士ということもあるようだ。

Crいや、それもあるけれどここでちょっと悩むのが、conserveという言葉だ。例年、仕事関係で参加し所属もしているのが文化財保存修復学会だけれど、ここでも保存と修復という語がならんでいる。直訳的には、保存はConservation、修復はRestorationであって、英語ではそれを行う専門家を指す言葉として、ConservatorとRestorerという言葉がちゃんとある。ただ英語でもconservatorを保存を専門にする人として区別しているかというとそんなことはなくて、ひっくるめて日本語でいう修復家という意味でconservatorということも多いらしいのでややこしい。

ちょうど学会の会報(通信)が来たところなので(いつもはほとんど読まないけど)、ちらちらと読んでみたら、E.C.C.Oというのがあって、これはthe European Conference of Conservator-Restorers' Organizationsというそうだけれど、ここでは二つの語をハイフンで結んでしまっているのだねぇ、ヨーロッパでも区別してないってことかな。

その記事によると、ドイツが「いわゆるボローニャ・プロセス(何だか知りません)に従い、修復家(ほら、学会でも修復家と書いている)の資格として欧州共通の学位習得システム」を導入したことを受けて、E.C.C.O.は正式な修復家資格を大学での最低5年間の履修課程に相当すると定めた。しかし旧制度ではもっと長い修業期間が要求されていたのに対し、現在では高卒後3年間の教育(バチェラー)でも一応は修復家といえることになってしまった。専門家はこれに対し「滑稽な過ち」、「盲腸の手術を、まだメスも持ったことのない医者にさせるようなもの」と批判し、伝統技術に熟達した修復家はいなくなるだろうといっているそうだ。

このように最近は未熟な修復家でも文化財の修復をすることが可能になったことから、低水準の修復に伴う問題やら、中には裁判沙汰まで起きているとか、この分野でもアウトソーシングとか安価な労働力への傾斜などが質の低下へとつながっているようだ。うーむ、大変だな。

Durerそれから「デューラーは貸し出しません!」という記事があった。ミュンヘンのアルテ・ピナコークが所蔵するデューラーの「毛皮の上着を着た自画像(28歳の自画像):1500年」を、デューラーの生地であるニュルンベルグの美術館が今年予定のデューラー特別展覧会に是非と貸し出しを申し入れたら、所蔵先の絵画修復部門から、絵画の痛みと構造の脆弱性から貸し出しは無理と拒否され、それがバイエルン州議会の激しい討論にまで発展したという。この論争は「文化財を守る修復家の判断は政治的駆け引きに勝るか?」という象徴的な出来事として注目を浴びたのだそうだ。

あれあれ、小説と関係ないことで脱線しているうちに時間が過ぎてしまった。本当は小説に登場する絵画の画像なんかをネットで探し出して羅列して何か書いてみようなんて考えていたんだけれど、また読み進んだら書きましょうか、どうしましょうか・・・

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コメント

こん**は、拙ブログをご紹介いただきありがとうございます。さすがtakiさんの専門分野だけあって勉強になりました。

>小説に登場する絵画の画像なんかをネットで探し出して羅列して何か書いてみようなんて考えていたんだけれど、また読み進んだら書きましょうか、どうしましょうか・・・

 よろしければお願いします!

投稿: ゆうけい | 2012/04/09 13:47

ゆうけいさん、こちらこそ素敵な小説をご紹介いただいてありがとうございます。すごく楽しいです。

ご要望もありがとうございます。この季節はなかなかと時間がとれないのですが、ぼちぼちと絵画画像を集めて続きを書いてみたいと思います。といっても絵画についての蘊蓄をたれるほど近代絵画事情に詳しいわけではないので、それにまつわる個人的な話になると思いますが。

投稿: taki | 2012/04/09 23:03

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