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2012/04/30

いわさきちひろ展

迷路の館、またの名を芸術の館ともいわれる兵庫県立美術館に、いわさきちひろ展を見に行って来ました。

4月から和菓子職人として働き始めた末っ子は土日休みがないのですが、ちょうど今日が休みだったので家内と3人で行って来ました。

Chihiro連休飛び石の日で午後は雨の予報だったので午前中に出かけたのですが、駐車場はすでに満杯のため、例によって近くの量販店駐車場に車を駐めて美術館まで歩いて行きました。帰りにはちゃんと買い物をしましたよ。

展示数は約130点と少なくはないのですが、作品が比較的小さいためか、展示は別館のギャラリー棟3階のみでした。

会場についた時にはすでに入り口で長蛇の列、入場後も中は随分と混み合っていましたが、見終わるお昼すぎには入り口の列もなくなる程度にすいてきていました。皆同じ事を考えて朝から来ていたようです。

いわさきちひろの絵は誰でも知っていると思いますし、没後38年になる今でもどこかで挿絵として使われ、また絵葉書やカレンダーなどなど、未だに引く手あまたの人気作品ですから、作品についてどうこうという必要もないと思います。今回の展示でも、「あ、これ見たことある」というような声が何度か聞かれました。

展覧会の詳細を知りたい方は、下のリンクをクリックしていただくと美術館サイトにあるパンフレットのpdfファイルが開きます(そのうちリンクが切れるかもしれませんが)。

いわさきちひろ展

Chihiros独特のあの画風、とくに彼女の描いた子供の絵が好きで、学生の頃から働き始めてしばらくまでに何冊か画集などを買いました。もう40年近くまえの話ですが、その後、結婚し子供が生まれ、赤ん坊からこどもに育っていく過程での所作を見ていると、本当にちひろの絵そのままでした。今さらのことですが、彼女のこどもに対する観察眼の鋭さを感じます。

いわさきちひろの絵は透明技法を駆使した水彩画であることと、おそらくは大半が原画としてよりは印刷を前提として制作されたと思われることから、少し離れてみると画集や絵本の印刷とほとんど変わらないように見えます。多くの場合、絵本の絵と原画の大きさもそれほどの差はないということもその要因だと思います。

Chihiro2しかし近寄ってみると、紙の肌にのった水彩絵の具の微妙な起伏や表情が感じられます。

ちひろの絵は水彩のぼかしが特徴ですが、ぼかしは水彩紙を水で濡らしておいて、そこに薄めた絵の具をのせてにじみ広げていくので、いわゆる筆でべたべたと塗るのと違って、完全にコントロールすることはできない偶然性が介在する技法です。しかし迷いのない着彩を見ていると、矛盾するようですがその偶然を相当にコントロールしていたのだろうと思います。

Chihiro5
ぼかしも素晴らしいのですが、ぼかしの中にくっきりとした輪郭線は原画ならではの臨場感があります。とくに着彩でなく、ぼかしの中に白抜き(色を付けずに紙の白地を残している箇所)のくっきりとした輪郭線は迫力さえ感じました。

会場内にはアトリエも再現されています。ちひろが使った絵の具がそのままに置かれていたのをまじまじと見てしまったのは職業柄いたしかたありませんが、久しぶりに鉛チューブの水彩絵の具を見ました。

Chihiro3鉛チューブは安全性という面から、もう20年くらい前からだったか使われなくなっていて、今市場に出回っている金属製の絵の具のチューブは大半がアルミです。中には鉛の独特の柔らかさを失わないために高価な錫チューブを使っているものもあるようですが、めったにありません。

Chihirootumu鉛チューブはアルミに比べると柔らかくて絵の具を絞り出しやすく、独特の細かに凹凸の起伏に富んだ、いってみれば暖かみのある外観になりますが、アルミチューブは硬くて起伏の少ない冷たい外観になるので、よく見ると分かります、といっても鉛チューブを今見ることは、古い絵の具でも持っていない限りできないですけどね。一緒に置いてあったボトル入りのポスターカラーは中身がすっかり乾いてカラカラになったものをそのまま展示してありました。

Chihirop展示作品の中には、複製画もいくつかありました。それはちひろが使った紙が、戦後よく使われた酸性紙であり酸性紙は時間とともに劣化する宿命があるため、東京のちひろ美術館とエプソンが協力してデジタル化し、保存性のよいピエゾグラフという印刷画として再現しているとのことです。酸性紙とピエゾグラフについては下記リンクを参照してください。

ピエゾグラフ(エプソン)
酸性紙(Wikipedia)

エプソンのサイトの説明では原画が残っていないものを印刷物から再現とありますが、会場の説明では絵の具の色あせや酸性紙の劣化があるために、デジタル化して残すとありました。劣化のない中性紙が画用紙として普及したのは、ちひろの死後のことだそうです。

確かにピエゾグラフの再現性は素晴らしいものがありますが、そうはいっても原画のもつ絵の具の肌合いまでは無理だったと思います。

Chihiro4_2さて、いわさきちひろの絵というと笑顔や幸せそうな表情のこどもばかりを思い浮かべますが、一方で戦後の混乱期、特に広島で原爆に被災したこどもたちや晩年のベトナム戦争に取材したこどもたちの絵もあることはあまり知られていないのではないかと思います。私は画集にあったいくつかの絵でベトナム戦争を題材にした絵本(戦火のなかのこどもたち)があることは知っていたのですが、今回の展示でもそれらの絵は重要な部分を占めています。それらの絵の中ではこどもたちは微笑んでいません。しかし何もいえない目が強烈に訴えてきます。

原爆に取材した絵は、当時のこどもが書いた作文とそれに基づいた絵が展示されていました。しかしそれらの作文を読みかけたのですが、涙がでそうになってとても読むことができませんでした。一つだけ読んだのは、両親を原爆でなくした小学6年生(当時)の文でしたが、とても小学生が書いたとは思えないほどしっかりとした文でした。それを読んだあと、昨年の大震災あるいは阪神淡路大震災時に親を亡くしたりしたこどもたちのことが思われました。

Chihirosnow最後に、協賛の毎日新聞が購読者に毎月配っている「毎日夫人」という冊子の表紙はずっとちひろの絵が使われていますが、会場を出た通路の壁にはその歴代の表紙が載ったパネルがずらっと並んでいました。我が家も毎日新聞なので毎月この冊子が配られるのですが、表紙は楽しみにしているものの中身は実はあまりまともに読んだことがありません。来月はちょっと気を入れて読んでみようと思います。

会期は5月6日、今度の日曜日までです。

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