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2012/06/03

芦屋市立美術博物館 - 吉原治良展は夢の跡

前回の続き。

5月22日、芦屋川から旧堤防(防波堤)痕の歩道をしばらく歩いてやっと芦屋市立美術博物館に着く。

吉原治良は、戦後日本の現代美術では重要な役割を果たし、芦屋において当時の若手美術家による具体美術会を率いたことで知られている、らしいが、詳しいことは芦屋市立美術博物館の展覧会案内およびWikipediaでどうぞ(展覧会はすでに終了しています)。

美術館の案内にいくつか作品の画像が紹介されているが、特に円を描いた作品が有名だそうだ。僕が特に気に入ったのも、一階のホールに設置された四角に囲った部屋に展示されていた、大きな白地に真っ黒の円を描いた作品だった。ただ、パネルで囲っただけの部屋は天井が吹き抜けで、二階からの照明が目に入って眩しくて見辛かった。展示方法を考えるべきだったと思う。

他の抽象画もかなりインパクトのある作品だが、その多くが画面にヒビが入っていたり、ひどいものは剥落していたりで、戦後という比較的新しい作品にもかかわらず状態の悪いものが多かった。八割がたは何らかの問題を抱えているように思える。これほど保存状態の悪い作品群の展覧会というのは初めてだ。

保存方法に問題があったのかもしれないが、むしろ作者が、使う材料とその保存性ということについて無関心だったのではないかと思われた。近代日本絵画の明と暗を同時に見るような展覧会だった。

ただ、円の作品はそれぞれにさほど状態は悪くないようだったが、これらの円も実は絵画用材料ではなくて、保存性のあまりよくない看板用の絵具を使ったものもあったりするので保存には慎重さが必要だろう。展示ではアクリル(絵具)とあったが、実はあれは看板用絵具だということを以前に兵庫県立美術館の修復室の方からうかがったことがあったのだが、確かに実物を間近に見てみると、それがよくわかった。何しろ僕の会社が作っていたものだから・・・だから仕事中に展覧会に行くことができたのだけれど。

状態のよくない作品の多くは油彩画とされていたが、きっちりした油彩画ならばここまでひどいヒビ割れや剥落は起きないと思うのだが、一体どういう描き方をしたのだろうかと思う。でなければ、よほどひどい扱いを受けたのか?

表現に傾注するあまり、材料や将来の保存性に気を配らない作品が近代日本美術作品には多いとは聞いていたが、その末路を見る想いの展覧会だった。ただし作品そのものは素晴らしいものだった。

しかし戦前あたりの日本人の描いた自画像というのはなんであんなに暗くぼけているものが多いのだろうか?

Museum2閉館の放送が流れるなか、二階の大きなガラス張りの窓から外を見ると、村上春樹が「モノリスの群れのようにのっぺりと建ち並んでいる」と書いた芦屋浜の高層住宅が、美術館の庭で遊ぶ子供たちとは対照的に無機的な姿で立ち並んでいた。ひび割れ剥落した抽象絵画群とモノリスの建ち並ぶ光景は、ひょっとして村上春樹の描く異世界への入り口か、なんてことはありえないが、そんなことを思い起こさせる、なんてことも今思いついただけだけどね。

Tanizaki美術館のとなりは、谷崎潤一郎記念館とある。ただ僕は谷崎の本は読んだ覚えがない、というか関心がないので、今後も中に入ることはなさそうだ・・・ま、先のことなど分からない、なにせ芦屋といえば、在原業平、谷崎潤一郎、村上春樹というくらい、いうくらいというか村上春樹しか読んでないし、芦屋市民でもないけど。

River2堤防痕を歩いて芦屋川まで戻ると、河口で遊んでいる人が見えたので、僕も降りてみた。芦屋川は阪神の駅辺りでは水面が見えているが、河口に近づくと伏流になって水面はみえず、一面の砂浜になっていた。

真っ青な空が映っているのか、海も素晴らしく青く澄んで見えた。

向こうに見える橋は湾岸線だろう。その手前の海面に点々のようなものが見えるのは、サメの背びれ、なんかではもちろんなくて、三艘ほどのボートが練習をしている姿だ。

River3砂浜に降りたが、思ったほど塩の香りがしない。海水を少しなめてみたが、伏流とはいえ河口のためかほとんど塩辛さがなかった。浅瀬にはヤドカリが見えたのだけれど、残念ながら小さすぎて写真には写っていなかった。

Ashiya帰路も川沿いの地道をのんびりと駅まで歩き、阪神電車で三宮まで帰ろうと思ったのだが、来たのはまたしても山陽電車の姫路行き直通特急だった。

そのまま乗っていけば明石までいけるが、そうはいかないので、三宮でJRに乗り換え、帰路についたのだ。

以上で、芦屋市立美術博物館全三部作完結。なぜか、なんとか二部作とか四部作っていうのはなくて、三部作で終わるんですよね、っていうほどのもんでもないですが。

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